佐藤集雨洞の洞穴

twitterで「創元推理文庫旧装丁bot」を動かしている佐藤集雨洞のブログ

追跡、S.D.G.!(1) 鈴木画房って?

鈴木画房という言葉

「S.D.G.、それにまつわる人々」(3)~何を課題とするのか  で設定した課題の内、

「(2)S.D.G.と併記される三人の詳しい経歴がわからない」 という点の、「石垣栄蔵」について、ある程度の調べが付いたことは、以前書いた通り。

今回からは、設定した課題の大きなもの、すなわち「(1)創元推理文庫の旧装丁者の名義に現れる、「S.D.G.」が何を指しているのかわからない」 、についての回答を目指すことになる。

これまで、S.D.G.の調査が(東京創元社に問い合わせても)ほぼ進展しなかったことを紹介した。東京創元社からは、S.D.G.に関する詳細は残っていないという返事を受け取っていたのだ。

しかし、石垣栄蔵について調査する中で、筆者は、石垣が勤めた会社に関するこんな記述に出会っていた。

「退院後数ヶ月してから、運送会社に勤めていたが、絵の創作を捨てきれず、生活上、鈴木画房というデザイン会社に就職した。」

~石垣敏夫「画家石垣栄蔵のこと」 蜷川 讓 編 (2013) 『ロマン・ロラン讃歌』 所収  

「S.D.G.と、それにまつわる人々」(9) 「創造する喜びがそれだ」  参照

この「鈴木画房」という言葉に、筆者は注目した。

S.D.G.の「S」は「鈴木」なのかも?

東京創元社からの返答にあった、「S.D.G.は『創元社のデザインチーム』のことか?」という推測は、S.D.G.が何かの略称だったことを伺わせる意見だった。その推理が妥当なものであるかどうか、確かめる手段は尽きてしまっていたものの、その可能性は大いにある。

そんなことが念頭にある中で出会った「鈴木画房」という名称には、 「略称がSになる単語」「創元」ではなくて 「鈴木」だったんじゃないか!? そんな推理を働かせるのに十分なきっかけを与えてくれたのだった。 つまり、「鈴木画房=S.D.G.」説が浮上したのである。

しかし…

この頃までに、「S.D.G.」「石垣栄蔵」「太田英男」…など、重要と考えられる用語については、これでもかこれでもかと、いろいろな方法で検索・調査をしていた。

一方、この「鈴木画房」についてだけは、調査しないままに時間が過ぎてしまった。というのも、その頃はちょうど、初めて石垣栄蔵についての詳細がわかったことに、筆者が興奮していたためである。そちらの内容を吟味するのに熱中してしまって、「鈴木画房」について調べるのが後回しになってしまったのだ。

「鈴木画房」の調査開始

さて、それからしばらく経ったある晩。

晩酌で酔いの回った頭に、ふと「鈴木画房」という言葉が浮かび上がり、「そうだ、忘れてたな」と気付いた。思い立ったに任せて検索した。

やはり、単純なgoogle検索では、特にこれといった情報が見つからない。

唯一、日本年金機構のサイト内のpdfに、名前が出て来た(この検索結果は今も同様に表示される)。けれども、実はこのサイトに気付いた時期が、ちょうど年金記録漏洩問題が持ち上がったタイミングだった。その影響で、googleの検索結果から、肝心のリンク先が開けなくなっており、こちらの結果には、何日も待ってからアクセスし直すことになった。(それだけ当時、数多くの人が年金機構のサイトにアクセスしようとしていたということだ)

画面を開けなかった期間は、「どんな情報が隠されているんだ!(ドキドキ…)」と楽しみに「年金問題の解決」を待っていたのだが…

数日後にいざそのページにアクセスすると、中身はすんなり開けたものの、内容は何のことはない、「持ち主不明の記録のある事業所一覧表」という内容であり、「鈴木画房」の名称が載っているだけで特に参考にならなかった。期待が高まった分、だいぶ大きな肩すかしとなった。(そういえばこの時の年金問題というのは何らかの解決を見たのだったろうか?)

「やっぱり特に記録は残ってないか…」 諦め半分で、引き続きgoogle books で検索してみる。 果たしてその結果は。

…「!?」

夜中の酔いが、一気に醒めるには十分なものだった。

(つづく)

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