佐藤集雨洞の洞穴

twitterで「創元推理文庫旧装丁bot」を動かしている佐藤集雨洞のブログ

「S.D.G.、それにまつわる人々」(2)~前提となるデータ

今回のシリーズで何を課題とするか。それは、次の作品群の装丁に表れている。まずは、本記事で、それらの作品をまとめて提示しておこう。

 

 

(1)「S.D.G.」と共に記された装丁家

まずは、「S.D.G.」という名称と共にその名前が記載されていた、あるいは記載された作品のある装丁家の作品が、第一の対象となる。該当するのは、以下の3人である。

(1.1.) 太田英男

まずは、下の記事で言及したことのある、太田英男の装丁から紹介する。

satopseudo.hatenablog.com

その内のほとんどが、S.D.G.と併記されていることがわかる。

159 クルンバーの謎

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S.D.G. 太田英男
初版 1959/10/23 

※奈良(2014)によれば、奥付によると1959年発行となるものの、カバーに「SFマーク」が付いているため、実際の発行は(SFマークが設定された)1963/9以降にずれ込むことが明らかだということである。

画像は「ホームズ・ドイル・古本 片々録 by ひろ坊~「さすがはドイルだ」――『クルンバーの謎』(5)」より http://blog.livedoor.jp/bsi2211/archives/52129032.html

319 パーカー・パインの事件簿

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S.D.G. 太田英男
初版 1963/10/18

333 透明人間

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S.D.G. 太田英男
初版 1964/2/28

336 危険なやつは片づけろ

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S.D.G. 太田英男
初版 1964/6/20
ダブル・ショックとの色違い

373 消された男

12-Scan0314

太田英男 (この装丁においてはS.D.G.併記がなされていない)
初版 1965/11/5

263 ダブル・ショック

2-Scan0817

S.D.G. 太田英男
再版 1969/9/5
危険なやつは片づけろの色違い

(1.2.) 石垣栄蔵

続いては、石垣栄蔵。

322 吸血鬼ドラキュラ

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S.D.G. 石垣栄蔵
初版 1963/12/20
※マークは様々な変遷を経たものとして有名な作品だが、デザインの方は(後の改訳版における色違い以外)全て同一のものだった

332 宇宙船ビーグル号の冒険

ビーグル号60901

 

S.D.G. 石垣栄蔵
初版 1964/2/5

画像は「Hideki Watanabe's SF Homepage」より
http://www.asahi-net.or.jp/~yu4h-wtnb/database/sogen/60901.htm

335 復讐の女神

21-Scan0324

 

S.D.G. 石垣栄蔵
初版 1964/6/10

180 ケンネル殺人事件

ケンネル87141-578596-1

 

S.D.G. 石垣栄蔵
4版 1964/8/28

画像は「リサイクルブックのお店 すずめのお宿」より
http://www.shop-online.jp/suzume/index.php?body=spec&product_id=578596&category_id=87141

181 カブト虫殺人事件

2-Scan0355

 

S.D.G. 石垣栄蔵
3版 1964/8/28

312 チャンドラー傑作集2

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石垣栄蔵
初版 1965/6/25

311 チャンドラー傑作集1 後記5p

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石垣栄蔵
5版 1966/12/2

125 ガーデン殺人事件

05-Scan0343

 

S.D.G. 石垣栄蔵
12版 1969/8/29

奈良(2014) (下記参考文献)のデータでは、「17版 1973/5/26」のカバーが紹介されている。上の筆者所有の本からは、奈良(2014)のものより以前に同デザインが使用されていたことがわかる。ただし、この版には装丁家のクレジット表記が無い。そのため、明確にこれが「S.D.G. 石垣栄蔵」と記載されているわけでは無いことは断っておく必要がある。

(1.3.) 藤沢友一

326 マラコット深海

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S.D.G. 藤沢友一
初 1963/12/6

※画像は 「楽天オークション」より http://auction.rakuten.co.jp/item/10001697/a/10218303/

(2)アート・コーナー

「S.D.G.」関連の3人に加えて、次に示す諸作品、つまり「アート・コーナー(あるいは ART CORNER)」名義が記載されているものも、考察の範囲に入ってくる(その理由は後述する)。

225 ポワロの事件簿2

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201-03-Scan0060

 

アート・コーナー
再版 1961/7/28

※下の配色は、改訳後11版(1986)のもの。

281 あでやかな標的

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ART CORNER
初版 1962/8/18

280 三つの道

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ART CORNER
初版 1962/9/7

302 通り魔

18-Scan0320

 

ART CORNER
初版 1963/3/8

158 ポワロの事件簿1

199-01-Scan0058

 

アート・コーナー
再版 1963/8/30

注記

上記の作品には一部、oldsogenbot(twitter)で紹介できていない作品が含まれる。これは単純に、現時点でoldsogenbotが所有していないために過ぎない。

これら未所有の本に関するデータは、(こういう時に本当に頼りになる)奈良泰明 (2014) 『創元推理文庫書影&作品目録 (新訂増補版)』に掲載されたものを利用したものであることを先にお断りしておく。

 

年代についても、一つ断り書きを。

上に上げた画像・データは、装丁家ごとにそのカバーが使用され始めた年代順に掲げたものである。今後考察を進めていく中で、その年代を問題として取り上げる部分がある。その際に重要になるのは、「いつその装丁が初めて世に出たか」という点である。

※この点は、oldsogenbot(twitter)での紹介の仕方と大きく異なっている。oldsogenbot(twitter)では、あくまで「所有している本がいつ出たものか」という点での年代の紹介しかしておらず、「その装丁の初出はいつなのか」には頓着せずにいた。

しかし、今回は初出年に注目することで出てきた推測があったのである。そのため、以下で紹介するデータの内、年代についてはoldsogenbot(twitter)とは異なっているものが多くあるので注意してほしい。

この初出年についても、その大半は奈良(2014)によるものである。 奈良(2014)においては、カバーが付く前の「白帯」の時代からのデータも併記されている。本記事では、それらではなく「カバー付き」と記述のあるデータの内、最も古い年を装丁の初出年として示した。

さて、以上に示した装丁、そしてそのデータから、どんな課題が浮かび上がるのか。

その把握を、次の記事のテーマとしよう。

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