佐藤集雨洞の洞穴

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『ラッフルズの事件簿』の刊行予告を見る

先日入手した『創元推理文庫解説目録 1981.7』。

この中の、[新刊と近刊]の欄から、ある記述を見つけたので紹介する。

 

それは、「E・W・ホーナング 井上一夫訳 『ラッフルズの事件簿』」の刊行予告である。

このタイトルは、そう、「シャーロック・ホームズのライヴァルたち」の一冊として予告されながら、とうとう出版されずじまいというもので、一部界隈では有名なものだ。

(↓シャーロック・ホームズのライヴァルたちの例↓)


ラッフルズものにはその後、約25年経ってからの後日談があって、2004年になって、論創社が『二人で泥棒を -ラッフルズとバニー』以下の3冊に翻訳、かつ刊行したのだった。

二人で泥棒を 【論創社】 enter image description here

さて、目録に挙げられているタイトル(案)を以下に紹介する。それぞれ、刊行予告に示された仮題、英語原題、「論創海外ミステリ」刊行時のタイトルの順で示した。

  • 三月十五日 (The Ides of March 「三月十五日」)
  • 仮装劇 (A Costume Piece 「衣装のおかげ」)
  • ジェントルメン対プレイヤーズ (Gentlemen and Players 「ジェントルメン対プレイヤーズ」)
  • 最初の一歩 (Le Premier Pas 「ラッフルズ、最初の事件」)
  • 故意の殺人 (Wilful Murder 「意図的な殺人」)
  • 占有者は九分の所有者 (Nine Points of the Law 「合法と非合法の境目」)
  • リターン・マッチ (The Return Match 「リターン・マッチ」)
  • 皇帝の贈り物 (The Gift of the Emperor 「皇帝への贈り物」)
  • 閑居せず (No Sinecure 「手間のかかる病人」)
  • 女王陛下への贈り物 (A Jubilee Present 「女王陛下への贈り物」)
  • ファウスティーナの運命 (The Fate of Faustina 「ファウスティーナの運命」)
  • 最後の笑い (The Last Laugh 「最後の笑い」)
  • 泥棒を捕まえるには (To Catch a Thief 「泥棒が泥棒を捕まえる」)
  • 古い情炎 (An Old Flame 「焼けぼっくいに-」)

こうして見ると、論創社刊行時とは異なり、どの翻訳タイトルも、原題のほぼ直訳だ。

その点からは、果たして訳出作業がどこまで進んでいたのか、見当は付かない。もしかすると、タイトル案だけ決めておいてその他には手を付けていない、という可能性だってある。

それにしたって、ここまではっきりと予告しておいて、実際は出版されなかったのか!と改めて驚いた。

刊行予告を見てウキウキ楽しみにしていたのに…という当時の思い出(恨み、かな?)を今もネット上で目にすることがあるのも、宜なるかなである。

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(※執筆後に確認したところ、既に手元にあり、botにも登録してある「1980年2月の解説目録」にも同様の刊行予告を見つけた。しばらくの間(少なくとも2年近く)、この予告がなされていたということになる。)

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