『ラッフルズの事件簿』の刊行予告を見る
先日入手した『創元推理文庫解説目録 1981.7』。
【新規登録】『創元推理文庫解説目録』 (カバー:記載無し(日下弘と推定)/1981年7月) 創元推理文庫旧装丁bot pic.twitter.com/vnZkMAYFR4
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この中の、[新刊と近刊]の欄から、ある記述を見つけたので紹介する。
それは、「E・W・ホーナング 井上一夫訳 『ラッフルズの事件簿』」の刊行予告である。
このタイトルは、そう、「シャーロック・ホームズのライヴァルたち」の一冊として予告されながら、とうとう出版されずじまいというもので、一部界隈では有名なものだ。
(↓シャーロック・ホームズのライヴァルたちの例↓)
『隅の老人の事件簿』 バロネス・オルツィ (カバー:フォト・千房輝哲 デザイン・花岡豊/初版 1977) 横顔 創元推理文庫旧装丁bot pic.twitter.com/oDf08W9EfJ
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『ソーラー・ポンズの事件簿』 オーガスト・ダーレス (カバー:フォト・千房輝哲 デザイン・花岡豊/初版 1979) 横顔 創元推理文庫旧装丁bot pic.twitter.com/5MFFmoOf0n
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ラッフルズものにはその後、約25年経ってからの後日談があって、2004年になって、論創社が『二人で泥棒を -ラッフルズとバニー』以下の3冊に翻訳、かつ刊行したのだった。
さて、目録に挙げられているタイトル(案)を以下に紹介する。それぞれ、刊行予告に示された仮題、英語原題、「論創海外ミステリ」刊行時のタイトルの順で示した。
- 三月十五日 (The Ides of March 「三月十五日」)
- 仮装劇 (A Costume Piece 「衣装のおかげ」)
- ジェントルメン対プレイヤーズ (Gentlemen and Players 「ジェントルメン対プレイヤーズ」)
- 最初の一歩 (Le Premier Pas 「ラッフルズ、最初の事件」)
- 故意の殺人 (Wilful Murder 「意図的な殺人」)
- 占有者は九分の所有者 (Nine Points of the Law 「合法と非合法の境目」)
- リターン・マッチ (The Return Match 「リターン・マッチ」)
- 皇帝の贈り物 (The Gift of the Emperor 「皇帝への贈り物」)
- 閑居せず (No Sinecure 「手間のかかる病人」)
- 女王陛下への贈り物 (A Jubilee Present 「女王陛下への贈り物」)
- ファウスティーナの運命 (The Fate of Faustina 「ファウスティーナの運命」)
- 最後の笑い (The Last Laugh 「最後の笑い」)
- 泥棒を捕まえるには (To Catch a Thief 「泥棒が泥棒を捕まえる」)
- 古い情炎 (An Old Flame 「焼けぼっくいに-」)
こうして見ると、論創社刊行時とは異なり、どの翻訳タイトルも、原題のほぼ直訳だ。
その点からは、果たして訳出作業がどこまで進んでいたのか、見当は付かない。もしかすると、タイトル案だけ決めておいてその他には手を付けていない、という可能性だってある。
それにしたって、ここまではっきりと予告しておいて、実際は出版されなかったのか!と改めて驚いた。
刊行予告を見てウキウキ楽しみにしていたのに…という当時の思い出(恨み、かな?)を今もネット上で目にすることがあるのも、宜なるかなである。
(※執筆後に確認したところ、既に手元にあり、botにも登録してある「1980年2月の解説目録」にも同様の刊行予告を見つけた。しばらくの間(少なくとも2年近く)、この予告がなされていたということになる。)
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