ディクスン・カーのデザイナー名無し装丁(3)「絞首台の謎」の絵は何だ?
最後の「デザイナー名なし」シリーズは、こちら、「絞首台の謎」です。
- 「絞首台の謎」
絵柄が、先の「夜歩く」と似ています。 一瞬、同じ絵?と思いました。 単に反転させただけかな、と。 でも、そうではないことは、次の画像を見るとはっきりします。
これはまさに、表紙の絵の色を反転させたものです(windowsの「ペイント」を使っただけですが)。 こうすると、違うデザインだってことがはっきりしますよね。 建物・人物の基本的な配置は似通っていますが、それぞれの絵柄は異なっています。
そこで、この「元の絵はこうだったんだろう」と思われる画像を使って検索してみました。 しかし、芳しい結果は得られませんでした。 (同じような検索結果が得られない)
では、「夜歩く」の時と同じく、下の女性だけを切り取ってみては?と準備したのがこの画像。
こう切り取ると、なんかおかしいですよねぇ。 本当に女性なのでしょうか?
検索の結果は、今回もだめ。
結論としては、この「絞首台の謎」だけは元の絵の詳細がわからないままとなってしまいました。 わかることは、こちらの絵は「夜歩く」に比べて、どうもまがまがしいデザインだぞ、ということです。
さっきの「女性?」の絵も顔が仮面をかぶっているようでおかしいです。 他にも、「夜歩く」とはデザインが対比的です。特に、上部のデザイン。
「夜歩く」の方では天使がいますが、
「絞首台の謎」で姿が見えているのは、悪魔ですよね、これ。
ヒントになりそうなのは、「夜歩く」の検索をしたときに出てきたページにあった、「(「夜歩く」に使われている絵は)ホルバインの標題紙デザインの中で最も有名なもので、何度も模倣された」という説明。
「模倣された」というのは、先の「魔女の隠れ家=死の舞踏」が、他の作者によって何度もコピーされていたことと通じるんでしょう。
ということは、この「絞首台の謎」の元の絵は、ホルバインのフォロワーによって、モチーフの一部を変更された作品ということなのでしょうか? あるいはホルバインが、自分の作品のモチーフをパロディとして取り上げた別の作品? 答えははっきりしません…
※ただ、左上の悪魔の後ろ姿の下にかかるアクセサリー状のものに、書かれている"1523"の数字。
これは「夜歩く」で使われていた絵柄の初出とされている、エラスムスのParaphrasis in Evangelium secundum Ioannemの発表年なんです。
もしかしてこの絵がそれなんでしょうか…?
結局、「絞首台の謎」については、誰か、美術史や宗教学史?に詳しい人がここを見てくれて、「それは、~ですよ!」と教えてくれることを願うしかない結果になってしまいました。
(もしわかる方がいたら、是非是非教えてください!)
でも自分としては、前の二作品については明確にできたので、かなり満足しています。
ディクスン・カー作品で、デザイナー名が無い3作品の謎解きは、これにて(一部謎のまま)お開き。
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