佐藤集雨洞の洞穴

twitterで「創元推理文庫旧装丁bot」を動かしている佐藤集雨洞のブログ

時間旅行を経た創元推理文庫

いきなりなタイトルですが、今回のテーマ、本当のところは、「創元推理文庫の奥付に書かれている発行年」です。

 

1. 『初期創元推理文庫書影&作品目録』の指摘から

まず、紹介するのは、「初期創元推理文庫については何でもござれ、奈良泰明編『初期創元推理文庫書影&作品目録(新訂増補版)』」にいくつも書かれている「メモ」。

その一つ一つがすごい濃さなのですが、その内の一つにおいて、「初期のものにある、奥付の誤記」が指摘されています。(写真は 「湘南探偵倶楽部『初期創元推理文庫 書影&作品 目録/新訂・増補版』、盛林堂でも取り扱うよ。」 より)

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  • ギリシア棺の謎』 34版: 当該の版を 「1913年」 と誤記、正しくは1973年か?

  • 『チューダー女王の事件』 初版・再版・4版: 初版を 「1659年」 と誤記 正しくは1959

  • 『ダイヤを抱いて地獄へ行け』 初版: 発行年「1695年」 と誤記 正しくは1965

このように、創元推理文庫にはたまに、奥付の年月日に誤記があることが指摘されてきました。いわば「時空を旅してきた文庫本」ですね。

※チューダー女王については、喜国雅彦氏のサイトでも、ここで言及されています(お宝の山…) http://www.kunikikuni.com/kikuni/tantei/z.sougen.html

2. 元ネタ不明の写真から

また、これは残念ながら元ネタをどこで見つけたのかの記録をしていなかったのですが、次のような時間旅行本もあります。

RobotScreenClip

少し画像が小さいですが、こちらは、アシモフ『わたしはロボット』の11版。

初版の発行が正しくは1976年の4月23日のはずですが、1982年4月23日と記載されているため、11版の発行「1982年4月9日」と整合しなくなっています。


3. そして手持ちから見つけたもの!

今回、bot登録を紹介する準備中に、とうとう私も見つけてしまいました!

検索をかけてみた限りでは、まだ指摘されてこなかったはず。それがこの「時間旅行本」です。

それはこちら、『怪奇小説傑作集3』30版(1986年発行)です。

Evernote Camera Roll 20161007 230259

ご覧のように、1969(昭和44)発行の初版であるべきところが、1869年 に。つまり100年ずれてしまっているのです。

9を取るべきところで8の活字を取ってしまったのか、それとも、30版の「1986」につられて、その順番違いの「1869」にしてしまったのか…

いずれにせよ、今回これを見つけた瞬間は、まさに「キタ━(・∀・)━!!!!」となっていました。

感想

上で紹介したサイトで、喜国雅彦氏が「憎めない」という書かれているように、創元推理文庫には、こういう「いい加減さ」をたまに見せてくれるところがあって、楽しいんですよねえ。いい加減さとは、言い換えれば人間くささでもあります。

『初期創元推理文庫書影&作品目録』は、ある意味、この「創元推理文庫のいい加減さ」の実態に、極限まで迫った著作だとも言えますよね(なお、今回私が見つけた『怪奇小説傑作集3』は、「初期創元推理文庫」には該当しませんので、『書影&作品目録』で指摘されていないのは、当然です)。

実際には、内容には一切影響を与えてこないこういう点にも、楽しめるポイントがあるというのが、創元推理文庫を追いかける楽しさの一つだと思います。

皆さんの本棚にも、こんな時間旅行本が、あるかもしれません、探してみませんか?

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