佐藤集雨洞の洞穴

twitterで「創元推理文庫旧装丁bot」を動かしている佐藤集雨洞のブログ

マーガレット・ミラーのカバーにまつわる二・三の話

きっかけは、マーガレット・ミラーの『心憑かれて』の巻末インタビューだった。

「文庫データ・ボックス 最新インタビュー マーガレット・ミラーの場合」 IMG_4093

掲載されていたのは、今般入手した、猫マークの付いた旧装丁のもの。1990年初版だ。

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「今まで新しいカバーのしか持ってなかったな、このインタビューは載ってなかったのかな?良いインタビューだからもったいないよな」と考えて、どうだったか確認してみようと考えたのだ。

 

すぐに手元にあった方の一冊を開いてみた。現行カバーの『心憑かれて』だ。カバーは、デザイン吉永和哉・レイアウト岩郷重力+WONDER WORKZ(岩郷氏は、現在の創元推理文庫でかなりの数を担当していますね)。 IMG_4094

…あれ、インタビューも載ってる!?

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奥付を見たら、こりゃおかしい!これもさっき見た、1990年初版じゃないか!

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版が同じなんだから、内容が同じなのは当然。なのにカバーは、もうマークが廃止されている(猫がいない)もの…

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つまりは…これを買った古本屋が、カバーを掛け替えたとしか考えられない!

なんでこんなことをしたのだろうか?本来このカバーが付いていた一冊はどうしたんだろうか?

その後、全く同じ掛け替えをもう一冊発見した。 本棚にあった『見知らぬ者の墓』は、中身が1989年発行の3版なのに、新カバーだったのだ。

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新しいカバーを掛けた方が、新しい本だと勘違いしてもらえるとでも考えたのだろうか?本来このカバーが付いていた二冊はどうしたんだろうか?

  • (ちなみに、創元推理文庫で猫などの分類マークがカバーに付けられていたのは、1991年までだ。)

さて、ここでもう一つ、「?」な点が。 手元にある、創元推理文庫マーガレット・ミラー作品の、背表紙を見てもらいたい。

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新=白。 旧=猫・ピンク。 新=白、 旧=猫・ピンク、 新=ピンク、 新=白。

…あれ?『ミランダ殺し』だけ、新カバーなのにピンクなの?

創元推理文庫の背表紙の色については、先日、東京創元社のサイトにおいて[「翻訳ミステリについて思うところを語ってみた・その13 創元推理文庫の背表紙はカラフルなのだ」という記事が紹介された。

www.webmysteries.jp

この記事にあるように、現在の創元推理文庫の背表紙(背色、と言うのだそうだ)は、

  • ピンク: 女性作家
  • 茶色: 英国作家
  • 緑色: 本格、ユーモアなど
  • 青色: 警察小説、ハードボイルド、冒険小説など
  • 黄色: 日本人作家のミステリ
  • 灰色: ファンタジイ、ホラー
  • 藤色: 創元SF文庫

となっている(分類マークは廃止されたけど、分類する、という行為はこうして残っているのだ)。

そして、現在は白色の背表紙はないことになる。うーむ。

(話は違うけど、mysteryは「ミステリ」、fantasyは「ファンタジイ」(「ジー」や「ジィ」にあらず)など、表記に創元社のこだわりが見て取れる)

先に発行された『ミランダ殺し』(1993年3版)の背色はピンク。これは「女性作家」の色だから、上での説明にも合致する。でも、後に出たはずの『殺す風』(1995年初版)は白い背色で、例外的、なのだ。

なぜこうなっているのか、よく分からないが、もしお読みの皆さんもお持ちなら、確認してみてほしい。

あなたのマーガレット・ミラーの背表紙、何色ですか? (そしてそもそもの疑問も。インタビュー「マーガレット・ミラーの場合」は現行の本にも掲載されていますか?)

 

(最後に念のため: 写真に写っているもの以外にも、創元推理文庫マーガレット・ミラー作品は存在する。まだ揃えていないだけだ!)

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